2026年7月23日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】骨太の方針と日本成長戦略~市場の受け止めについて考える
●骨太の方針と日本成長戦略が閣議決定、危機管理投資と成長投資を推進する方向性を示す。
●政府の投資推進姿勢は日本株にポジティブだが、株高の展開には27年度予算の見極めが必要。
●市場の財政不安を和らげるには財源の明示が必要で日銀の適切な利上げは設備投資にも重要。
骨太の方針と日本成長戦略が閣議決定、危機管理投資と成長投資を推進する方向性を示す
政府は7月21日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」と「日本成長戦略」を閣議決定しました。骨太の方針では、「責任ある積極財政」のもと、危機管理投資と成長投資を拡大し、潜在成長率を引き上げることが基本方針として定められました。人工知能(AI)・半導体など17分野への官民投資を進める一方、債務残高対GDP比の安定的低下を図り、強い経済の実現と財政の持続可能性の両立を目指します。
日本成長戦略は、AI・半導体、情報通信、量子、防衛産業など17の戦略分野と62の主要な製品・技術などに官民投資を集中する方針です。危機管理投資と成長投資を推進し、人材育成や労働市場改革など8つの横断的課題にも対応します。官民投資は2040年度までに累計で370兆円超を想定しており、日本成長戦略などの施策による経済効果として、2040年度の名目GDPは1,100兆円に迫るとの試算が示されています。
政府の投資推進姿勢は日本株にポジティブだが、株高の展開には27年度予算の見極めが必要
今回閣議決定された骨太の方針と日本成長戦略は、主な内容が6月の段階ですでに報じられていたため、基本的な方向性は市場に織り込み済みと思われます。日本株にとって、政府が今後、危機管理投資と成長投資を推進していくという強い姿勢を示したこと自体は、ポジティブな材料となり得ますが、現時点ではまだ投資に関する指針と試算が示された段階に過ぎません。
日本株にとって好ましい展開は、まず2027年度予算で『「強く豊かな日本」投資枠』の規模が十分に確保され、複数年度の支援額、対象分野、実施時期が明示されることです。予算措置を複数年度計画とし、民間企業の予見可能性を高める方針が示されているため、具体的な金額と工程が判明すれば、民間企業は設備投資や研究開発を実行しやすくなります。この流れが明確になれば、骨太の方針と日本成長戦略を材料とした株高の展開も期待されます。
市場の財政不安を和らげるには財源の明示が必要で日銀の適切な利上げは設備投資にも重要
一方、国債市場では、6月30日に公表された骨太の方針の原案で、「財政健全化」の文言が使われなかったことで、財政悪化懸念が強まり、10年国債利回りが大きく上昇する場面もみられました(図表1)。なお、骨太の方針について財政などに関するポイントをまとめたものが図表2です。財政不安を和らげるにあたり、政府は危機管理・成長投資のための歳出拡大に対し、具体的な財源、国債発行額、歳出抑制策を明確に示すことが必要と思われます。
また、為替市場では、積極的な財政支出を進める政府が、日銀の追加利上げ判断に影響を及ぼすのではないかとの声も聞かれるなか、今回の骨太の方針では日銀に配慮する言及もみられましたが(図表2)、市場の懸念を完全には払拭できていない模様です。日銀が適切なタイミングで利上げを行ってインフレを抑制し、金利見通しを安定させることは、企業が設備投資計画を立てる上で重要な要素です。



