2026年8月3日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】日米両政府が協調介入を実施~米国側の意図とドル円相場への影響
●日米両政府は7月31日に円買い協調介入を実施、今回は円安是正を目的とする異例の介入。
●米国は長期金利上昇の波及などを警戒、ユーロ円での介入はドル需給への影響を避ける意図も。
●米国の協力などで円安進行はかなり抑制、ただ本邦収支構造など複数の円安材料は変わらない。
日米両政府は7月31日に円買い協調介入を実施、今回は円安是正を目的とする異例の介入
日米両政府は7月31日の外国為替市場で、円買いの協調介入を実施しました。日米の協調介入は、2011年の東日本大震災の直後以来、15年ぶりのことで、当時は円売り介入でしたが、円買い介入はアジア通貨危機を受けた1998年以来、28年ぶりとなります。片山さつき財務相は8月3日に「財務大臣談話」を公表、米国と緊密なコミュニケーションを維持し、今後、更なる協調介入を実施することも躊躇(ちゅうちょ)しない考えを明らかにしました。
協調介入は一般に、災害や金融危機などによって為替相場が急激に変動した際、行われることが多いように思われます。また、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米国は7月31日に、ユーロ円での為替介入、すなわち、ユーロの売却と円の購入を行ったと伝えています。これらの点を踏まえると、今回の日米協調介入は、円安の是正を目的とした異例のケースと考えられます。
米国は長期金利上昇の波及などを警戒、ユーロ円での介入はドル需給への影響を避ける意図も
今回、米国が円安の是正で日本に協力した理由として、円安が進行することで日本から米国への輸出に有利な状況となることへの警戒や、日本で円安によるインフレ観測の強まりから長期金利の上昇傾向が続けば、米国の長期金利上昇に波及して住宅ローン金利などが上昇し、米中間選挙に影響しかねないとの警戒があるように思われます。また、円安是正への協力で、日米政府の戦略的投資イニシアティブを促進させる狙いもあると推測されます。
なお、今回は米国がユーロ円で為替介入を行ったことも重要なポイントです。ユーロ円でユーロ売り・円買いの為替取引を行う場合、ユーロドルでユーロ売り・ドル買い、ドル円でドル売り・円買いを行います。これらの取引は、ユーロドルではユーロ安・ドル高要因、ドル円ではドル安・円高要因となりますが、ドルの需給に対する影響は中立です。そのため、円買いには協力するものの、ドル売りは回避するという米国側の意図が読み取れます。
米国の協力などで円安進行はかなり抑制、ただ本邦収支構造など複数の円安材料は変わらない
7月31日のドル円とユーロ円の動きを図表1、ユーロドルの動きを図表2に示しました。米国のユーロ円での介入時間は、前述の通り、ドル円でのドル安・円高の動き、ユーロドルでのユーロ安・ドル高の動きで確認できるため、ユーロドルの図表2から、日本時間同日午後10時半頃と推測されます。恐らく米国の介入はこの1回にとどまり、図表1のドル円の動きを踏まえると、日本の介入は断続的に行われた可能性が高いと考えます。
米国が円安是正に協力姿勢を示したことや、前述の財務大臣談話で、米連邦準備制度理事会(FRB)の「外国・国際通貨当局向けレポ・ファシリティ(米国債を一時的に米ドルと交換する制度)」を活用してドル売り原資を確保する方針が示されたことで、円安進行の速度はかなり抑制されると思われます。それでも、7月31日付レポートで示した日本の収支構造など複数のドル高・円安材料に、変わりはないとみています。



