2026年8月5日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】2026年7月日銀政策会合レビュー~日米協調介入を踏まえた考察
●政策金利据え置きは予想通りだが高田委員1名が反対、展望レポートはややタカ派的な内容に。
●植田総裁発言から利上げペースの手掛かりは得られずも、物価上振れリスク抑制への姿勢を確認。
●米国は日本に財政規律配慮と日銀利上げの理解を要請か、市場で9月利上げの織り込み進行。
政策金利据え置きは予想通りだが高田委員1名が反対、展望レポートはややタカ派的な内容に
日銀は7月30日、31日に金融政策決定会合を開催し、弊社を含む大方の予想通り、無担保コール翌日物金利の誘導目標を現行の1.00%程度で据え置くことを決定しました。今回、政策委員会の委員9名のうち、高田創審議委員のみ1.25%程度への引き上げの議案を提出しましたが、反対多数で否決されました。なお、同時に公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、いくつか注目すべき点がみられました。
実質GDPと生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)の見通しについて、基本的な修正の方向性(前者は今年度、来年度とも上方修正、後者は今年度下方修正、来年度上方修正)は、おおむね弊社の予想通りでした。ただ、金融政策の運営に関し、物価の上振れリスクを警戒する文言が追記されるなど、いくつかの修正があり(図表1)、これらを踏まえると、今回の展望レポートは、ややタカ派的と解釈することもできます。
植田総裁発言から利上げペースの手掛かりは得られずも、物価上振れリスク抑制への姿勢を確認
植田和男総裁の記者会見では、金融政策の運営に関し、「中東情勢」、「人工知能(AI)関連需要の拡大」、「為替相場の変動」の影響を注視していることが確認されました。また、基調的な物価上昇率が物価安定の目標である2%に近づいていることを踏まえ、「これまで以上に、物価の上振れリスクを意識する必要がある」、「こうした認識を持って、次回以降の決定会合において、しっかりと議論してまいりたい」との考えを示しました。
また、「(物価の上振れ)リスクは無視できない、ある程度はある、しかしそうならないように政策を運営していく」とし、政府の施策との整合性については、企業へのヒアリングによると、金利の高さは設備投資の制約になっておらず、「物価安定が投資促進にもある程度重要」と述べました。植田総裁の発言から、利上げペースに関する明確な手掛かりは得られませんでしたが、物価上振れリスクを抑制するという強い姿勢がうかがえました。
米国は日本に財政規律配慮と日銀利上げの理解を要請か、市場で9月利上げの織り込み進行
こうしたなか、米国政府は7月31日、日本政府と協調し、外国為替市場で円買いの為替介入を実施しました。ベッセント米財務長官は協調介入の理由などについて、7月31日から8月4日にかけて、複数メディアを通じて発言しています(図表2)。これらの発言から、ベッセント氏は日本政府に対し、「財政規律への配慮」と、「日銀による適切なタイミングでの利上げへの理解」を求めているように思われます。
市場が織り込む9月の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ確率は、7月30日時点の22.7%から、本日午前10時30分頃にはすでに60%近くまで上昇しています。植田総裁とベッセント氏は、8月31日から9月1日に開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で会うことになり、仮にその前後で高市早苗首相と植田総裁との会談が行われれば、市場の9月利上げの織り込みは、さらに進む可能性が高いとみられます。



