2026年9月9日
三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩
【市川レポート】急速な円高の進行が日本株に与える影響について考える
●足元の円高進行は、日銀のビハインド・ザ・カーブ懸念の後退による悪い円安の修正が主因とみる。
●悪い円安の修正が進んだ結果の円高であれば、日本株にとっては必ずしも懸念材料ではなかろう。
●短観や東京商工リサーチのアンケートを踏まえると現状程度の円高なら企業への影響も限定的か。
足元の円高進行は、日銀のビハインド・ザ・カーブ懸念の後退による悪い円安の修正が主因とみる
ドル円は9月2日の1ドル=160円39銭水準から、8日の152円89銭水準まで、わずか5営業日の間に7円50銭程度、急速にドル安・円高が進行しました。今回のレポートでは、円高の進行が日本株に与える影響について考えます。それにあたっては、ドル円レートの水準自体に注目することも大切ですが、どのような背景で円高が進んだのかを整理することが、まずは重要と思われます。
今回の円高進行は、日米金融当局者の発言をきっかけに、日銀が物価抑制のために適切な利上げを行い、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が切り上がっていくとの見方が市場に広がったことが1つの大きな要因とみています。この見方が広がったことで、日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」とインフレの悪化に対する懸念が大きく後退し、いわゆる「悪い円安」の修正が進んだ結果の円高と考えることができます。
悪い円安の修正が進んだ結果の円高であれば、日本株にとっては必ずしも懸念材料ではなかろう
悪い円安の修正が進んだ結果の円高であれば、日本株にとって必ずしも懸念材料ではないと考えます。実際、前述の9月2日から8日までの期間、日経平均株価は1.5%上昇しており、東証株価指数(TOPIX)は下落したものの、下落率は0.8%にとどまっています。このように、現時点では急速な円高の進行が、日本株に深刻なダメージを与えているという状況には至っていません。
なお、翌日物金利スワップ(OIS)市場の「2年先1年」金利は現在、今後2年間で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ5回を織り込んでいる状況にあります(図表1)。ただ、この織り込みはやや行き過ぎのように思われ(弊社は来年までに25bpの利上げ3回を予想)、今後、下方修正され、円安要因になることも想定されます。ただ、日銀のインフレ抑制への信認が維持される限り、悪い円安にはならないとみています。
短観や東京商工リサーチのアンケートを踏まえると現状程度の円高なら企業への影響も限定的か
次にドル円レートの水準に目を向けます。日銀が7月1日に公表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)において、2026年度の事業計画の前提となっている想定為替レートは、全規模・全産業で152円57銭、大企業・製造業の輸出企業で151円49銭でした(図表2)。ドル円は9月8日に152円89銭水準までドル安・円高が進みましたが、企業が業績の下方修正を急ぐほどの円高水準ではまだないと思われます。
また、東京商工リサーチTSRデータインサイトによると、2026年6月に実施した「為替に関するアンケート調査」では、望ましい為替レートとして、全体で平均136円80銭、製造業かつ資本金1億円以上の大企業で平均140円60銭という水準が示されていました(図表2)。これを踏まえると、悪い円安の修正による、現状程度の円高であれば、企業にとってはむしろ好ましいとも考えられます。



