ホームマーケット市川レポート 経済・相場のここに注目AI不安の背景にあるリスクについて考える

2026年10月26日

三井住友DSアセットマネジメント
チーフマーケットストラテジスト 市川 雅浩

【市川レポート】AI不安の背景にあるリスクについて考える

●ネオクラウドの信用不安、大手ハイパースケーラーの巨額の設備投資、循環投資のリスクを考える。
●3つのリスクが同時に実現してしまうとAI投資サイクルは下向き、成長下押しと市場の波乱要因に。

●AI不安が直ちに信用収縮や金融危機に発展するとの懸念は行き過ぎで、決算の見極めが重要。

ネオクラウドの信用不安、大手ハイパースケーラーの巨額の設備投資、循環投資のリスクを考える

足元の株式市場では、10月14日の米コアウィーブの社債急落以降、AI(人工知能)・半導体関連銘柄の下落基調が続いています。投資家の間では、AI投資の持続性や資金調達に対する不安がくすぶっているように見受けられ、今回のレポートでは、これらの不安の背景にある具体的なリスクを明らかにし、仮にリスクが実現した場合に予想される実体経済や金融市場への影響について考えます。


AIを巡る主な不安には、①コアウィーブなどネオクラウド(データセンターを大手AI企業などに貸し出す新興クラウド事業者)の信用不安、②大手ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の巨額の設備投資、③循環投資(大手ハイテク企業が新興AI企業に投融資を実施し、その資金で半導体やクラウドサービスを購入してもらう形態)があると思われます。以下、それぞれのリスクについてまとめます(図表1)。

3つのリスクが同時に実現してしまうとAI投資サイクルは下向き、成長下押しと市場の波乱要因に

①のリスクは、信用スプレッドの拡大に伴い資金調達コストが上昇し、データセンター向け設備投資の縮小で高性能な画像処理半導体(GPU)などの発注が減少、関連企業の業績と株価見通しが大幅に下方修正されることです。②のリスクは、投資回収の遅延による利益の圧迫です。また、稼働前のデータセンターの長期リース契約などは貸借対照表に計上されず、AI需要が鈍化しても支払い負担が残り、投資削減や信用不安につながる恐れがあります。


③のリスクは、循環投資に関わる企業に損失が連鎖的に広がることです。大手ハイテク企業の投融資で資金を調達した新興AI企業が経営悪化に直面すれば、投融資の価値が損なわれると同時に、大手ハイテク企業が期待する新興AI企業からの売り上げも失われかねません。仮に、3つのリスクが同時に実現した場合は、AI産業全体の設備投資サイクルが下向き、GDP成長率の下押しと金融市場の波乱要因になることが予想されます。

AI不安が直ちに信用収縮や金融危機に発展するとの懸念は行き過ぎで、決算の見極めが重要

ただし、経済や市場への影響の度合いは、AI投資が軽度の調整にとどまるのか、信用収縮・金融危機に発展するのかによって異なります(図表2)。市場は現時点で、AI産業が今後大きく成長することは認めつつも、その成長から得られる収益が、巨額の設備投資や借り入れ負担を正当化できるのか、という点を確認する段階にあると考えられます。少なくとも、今のAI不安が直ちに信用収縮や金融危機に発展するとの懸念は行き過ぎと思われます。


なお、今週は28日にアルファベットとマイクロソフト、29日にアマゾン・ドット・コム、来月10日にコアウィーブの決算発表が予定されており、各決算では上記のリスクを踏まえ、AI関連の売上高の伸びと設備投資のバランス、フリーキャッシュフロー(純現金収支)の変化などを精査することが重要です。また、決算発表後の信用リスク動向も注目され、AI不安が和らぐ流れとなれば、AI・半導体関連銘柄の反発につながるとみています。


※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。