先月のマーケットの振り返り(2026年1月)
2026年2月3日
1.概観
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株式 |
1月の米国、日本の株式市場では、メモリーなど半導体株を中心にAIデータセンター関連のハイテク銘柄の株価が好調でした。貴金属など資源株、防衛関連の銘柄は欧州、豪州の株式市場をけん引しました。ただ、マイクロソフト、インテル、米国医療保険会社、SAP、など大型銘柄の個別要因による株価調整が指数の上値を押さえました。中国、香港市場は政府の景気テコ入れ期待から上昇しましたが、インドは外国人投資家の利益確定売りにより下落しました。 |
|---|---|
| 債券 |
米国の10年国債利回り(長期金利)は上昇しました。 ①グリーンランドをめぐる米欧の対立から欧州勢が米ドル資産を売却したとみられる、②日本からのキャリートレードが減少するとの懸念、などが要因です。ドイツの長期金利は低下しました。米国との対立への懸念から、一時的な安全資産へのシフトが起きたことが要因のようです。日本では月間で長期金利は上昇しましたが、月末には消費者物価の上昇率低下や、衆議院解散などから材料出尽くしとなり低下しました。 |
| 為替 |
ベネズエラの大統領拘束など地政学リスクの増大や日本の財政懸念による国債売りのキャピタルフライトなどから、円ドルレートは月初円安となりましたが、ベッセント財務長官の日本の長期金利上昇に対する懸念表明や日米当局によるレートチェックのニュースが伝わると、一気に円高が進行しました。欧州勢は米ドル資産を売却した模様で、ユーロは米ドルに対し底堅い展開となりました。貴金属など商品市況が堅調に推移しているため、豪ドルなど資源国通貨は上昇しました。 |
| 商品 |
北半球に寒波が到来し原油価格は底入れしましたが、ベネズエラ大統領拘束、イランの内政問題は原油市場に大きな影響を与えず、低水準で推移しています。 |
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
2.景気動向
<現状>
●米国の7-9月期の実質GDPの成長率は前期比年率+4.4%に上方修正されました。政府機関閉鎖前の成長率であることには注意が必要です。
●欧州(ユーロ圏)の10‐12月期の実質GDP速報値の成長率は前期比年率+1.3%でした。7‐9月期の成長率は+1.4%でした。
●日本の7‐9月期の実質GDP2次速報値の成長率は前期比年率▲2.3%となりました。 4-6月期の成長率は+2.1%でした。
●中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.5%でした。7‐9月期の成長率は+4.8%でした。25年通年では+5.0%でした。
●豪州の7-9月期の実質GDP速報値の成長率は前年同期比+2.1%でした。4‐6月期の成長率は+2.0%でした。
<見通し>
●米国の25年の実質GDP推定成長率を+2.3%、26年見通しを+2.3%に上方修正しました。政府機関閉鎖の影響で10-12月期の成長は下押したようですが、懸念したほどの雇用情勢の悪化はなかった模様です。景気の腰折れは回避された模様で、26年1-3月期以降は、利下げ、減税効果の発現、政府機関再開に伴う成長加速などで持ち直すことになるでしょう。
●欧州では、25年+1.5%、26年+1.2%の実質GDP成長率の推定値、見通しを維持します。25年後半は、米国の関税引き上げによる輸出下振れなど弱さが見られましたが、①欧州中央銀行(ECB)の利下げの累積効果、②域内防衛費の拡大、③EUの財政支出拡大やドイツのインフラ投資拡大、などにより26年には成長率は回復に転じると予想します。但し、財政拡張の影響、食品価格やサービス物価の動向には注意が必要です。
●日本の実質GDP成長率見通しでは、25年度を+0.9%に上方修正し、26年度は+0.9%で据え置きました。米国関税の影響で短期的に景気は落ち込みましたが、「責任ある積極財政」のもと、ガソリン減税、電気ガス料金補助の増額、おこめ券など重点支援地方交付金の拡充、などの景気刺激策が決まりました。インフレ率低下に伴う消費の持ち直しなどもあり、GDP成長率は改善に向かう見通しです。
●中国では、26年+4.6%、27年+4.5%のGDP成長率を予想します。ハイテク企業の生産拡大が続いていますが、過当競争抑制政策の導入や不動産不況から、自動車や鉄鋼の生産の伸びが鈍化しています。政府は成長目標の達成を目指し、需要刺激策を追加すると予想します。
●豪州では、11月の家計支出指数が+1.0%と堅調で、雇用市場も改善傾向にあります。個人消費など内需の先行きは底堅さを保つと見られます。また、概ね商品市況も底堅く推移しており、景気を下支えしそうです。
3.金融政策
<現状>
●米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月の政策決定委員会で政策金利を据え置きました。「インフレ率は幾分高め」で「失業率には安定化の兆しがいくらかみられる」ことが据え置きの理由のようです。パウエル議長は、「関税の影響がピークに達すれば、政策の緩和が可能になる」とコメントしており、市場参加者の間では26年中の利下げの可能性に関する議論が始まりました。
●ECBは、12月の会合で政策金利を据え置きました。ラガルド総裁が「金融政策は良好な位置にある」と述べるなど、しばらく政策変更はなさそうです。
●日銀は12月の会合で政策金利を0.75%に引き上げました。賃金上昇の販売価格への転嫁が続いており、消費者物価の基調的な上昇が続いていると判断したようです。実際には、賃金、円安、米など材料コストの上昇分を販売価格に転嫁することに苦労している模様で、12月の消費者物価の上昇率は2.1%まで低下しました。ベース効果に加え補助金が増額された電気ガス料金の反映などにより、年明けには更なる上昇率の低下が見込まれます。
<見通し>
●米国では、景気が底堅くインフレ率も高止まりしているうえに、先行き労働市場が持ち直す見込みもあり、FRBは追加利下げに踏み切ることが難しい模様です。26年中は政策金利は据え置かれると予想していますが、2回以上の追加利下げを主張するFRBメンバーもいることには留意が必要です。
●ECBは、現状の2%をほぼ中立水準とみている模様で、弊社は、26年中ECBは政策金利を据え置くと予想します。
●日銀は1月の会合でも、26年以降も利上げを継続する姿勢を見せました。弊社は、日銀の利上げが進むと判断し、26年7月、27年1月、7月に実施すると予想していますが、食料品の消費税が引き下げられた場合、物価の上昇率が急低下することには留意が必要です。
4.債券
<現状>
●米国の10年国債利回り(長期金利)は、月間で上昇しました。①グリーンランドをめぐる米欧の対立から欧州勢が米ドル資産の売却に動いたとみられる、②日銀の利上げによる日本の金利の上昇を受け、日本からのキャリートレードが減少するとの懸念、などが要因と見られます。
●ドイツでは長期金利は月間で若干低下しました。グリーンランドをめぐる欧米の対立激化から、一時的に安全資産への退避が発生した影響が残ったようで、月末にはほぼ同水準まで戻りました。26年、ドイツは過去最高額の国債発行を計画しており、継続して長期金利が低下する局面ではないようです。
●日本の10年国債利回りは上昇しました。日銀によるクレジットタイトニング(市中金利の上昇要因)が進行する中、日銀が12月に政策金利を引き上げたことが要因と見られます。高市首相が消費税減税検討を公約に、国会を解散すると材料出尽くしから、月末にかけ長期金利は低下しました。
●米国の投資適格社債については、前月比で社債利回りは若干上昇も、スプレッド(国債と社債の利回り差)は歴史的にみても低水準にあります。
<見通し>
●米国長期金利は短期的にもみ合い、中期的には上昇すると予想します。財政赤字が高止まるとみられるため、4%をやや上回るレンジを想定します。
●欧州では、財政赤字が上振れる方向にあり、27年にはECBによる利上げの可能性が出ていることから、長期金利は緩やかな上昇を予想します。
●日本の長期金利は、財政拡張を受け先高観が続くと予想します。日銀の段階的な利上げを見込んでいますが、物価や為替動向には要注意です。
5.企業業績と株式
<現状>
●米ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績の見通しは堅調です。1月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+14.6%、TOPIXの予想EPSは同+11.8%となりました。
●米国株式市場では、AI関連投資の拡大を受け半導体など電子部品、機器を販売する企業の株価が、好決算を背景に上昇しています。マイクロソフトなど一部大手ハイテク企業の中には、AI関連の収益の拡大が巨額の設備投資に見合っていないとの投資家の不満から株価が下落するものもありましたが、光ファイバー、発電設備など資本財企業にもAI投資の恩恵が広がっています。航空宇宙関連株の株価も上昇しました。NYダウは前月比+1.7%上昇し、S&P500種指数は同+1.4%上昇しました。トランプ政権の医療費支出抑制方針を受け、医療保険セクター株の下落が顕著でした。
●日本株式市場は、高市政権の経済政策に対する期待の高まりと、半導体関連株、電子部品などAI投資関連株の上昇により、史上最高値を更新しました。月中の円高に、株価がネガティブに反応したことは注意点です。TOPIXは+4.6%上昇し、日経平均は月間で+5.9%プラスとなりました。
<見通し>
●米国株式市場では、AI関連事業の収益貢献が遅れている企業の株価調整が起こる可能性はあるものの、利下げ効果や減税策の発現から、ハイテク以外のセクターにも業績や株価の回復が期待できそうです。また、FRBによる流動性供給の再開は金融セクターの株価に引き続きプラスとなりそうです。
●日本株式市場では、高市政権による、①ガソリン減税、②電気ガス料金補助の増額、など物価上昇を抑制しつつ、消費を活性化する景気刺激策が評価されています。世界景気の回復、原油安などエネルギーコストの低下、円安の進行により輸出採算の改善も見込まれ、26年度の企業業績は改善に向かう見通しです。株主還元強化への期待も株価の上昇要因です。懸念材料としては、決算対策の益出し売りが挙げられます。
6.為替
<現状>
●円の対米ドルレートでは、中旬まで、米国のベネズエラ大統領拘束など国際情勢の不透明感や日本の財政悪化懸念から円安が進みました。しかし、23日にニューヨーク連銀がレートチェックを行ったと報道されると、介入警戒感が高まり円高に転じました。月末比較でも円高となりました。
●ユーロ・米ドルレートは、グリーンランドをめぐり欧米が対立し、欧州勢が米ドル建て資産を売却したとみられることからユーロ高となりました。ユーロ・円レートでは、日本の長期金利が上昇しユーロ高の進行に歯止めがかかりました。月間ではドルに対する介入警戒感もあり、ユーロに対しても円高となりました。
●円の対豪ドルレートは円安となりました。金など貴金属や非鉄金属など商品市況の上昇が豪ドル高要因となっているようです。国内景気が想定以上に堅調で消費者物価指数も高止まりしているため、利上げ観測も強まっています。豪ドルは、米ドルに対しても強含みました。
<見通し>
●円の対米ドルレートは、日本の解散総選挙などの影響から、短期的には円安が進む可能性が想定されます。中期的には、日銀の段階的な利上げ観測、日本のインフレ率の低下、米国の追加利下げ観測などから、円高方向に修正される見込みです。
●円の対ユーロレートでは、もみ合いを予想します。FRBの議長交代後の26年後半には利下げ観測が強まる一方で、ECBの27年の利上げが意識され始めると見ており、ユーロは米ドルに対し上昇しやすいと予想します。円も米ドルに対し円高を想定するため、円の対ユーロレートはもみ合いとなる見込みです。
●円の対豪ドルレートでは、豪ドルには商品市況上昇などの対米ドルでの上昇要因がありますが、日銀の利上げ観測などが円高要因となりそうです。
7.リート
<現状>
●グローバルリート市場(米ドルベース)は、欧州、カナダが好調で、米国市場も堅調でした。データセンターや研究施設関連のリートは堅調に推移しましたが、トランプ大統領が「機関投資家による住宅購入禁止を推進する」と投稿し住宅関連のリートは下落しました。豪州、日本は下落しました。長期金利の上昇が嫌気されたようです。欧州では不動産評価額は改善傾向にあるなかで、長期金利が安定したことが評価されたようです。
●日本では、オフィス賃貸市場のファンダメンタルズ改善が続くとともに、首都圏のマンション価格の上昇が続いています。東証の投資家主体別売買動向によると、12月、投資信託、事業法人、個人投資家が買い越す一方で、海外投資家と金融機関が売り越しとなりました。S&Pグローバルリート指数の1月のリターンは、構成比の大きい米国が堅調で、欧州が好調であったことから前月末比+2.82%となりました。月間の換算用の円ドルレートが円高となり、円ベースのリターンも同+1.19%となりました。
<見通し>
●グローバルリート市場は、金融政策や長期金利動向に左右される展開が想定されます。欧州や豪州では不動産価格の再評価が進んでいることが相場を下支えしそうです。米国では国内景気が減速している模様ですが、金利低下期待と出遅れ感が相場を支える見込みです。シンガポール市場では、金利低下と賃料上昇で業績改善が見込まれます。中国や香港では、3月の全人代に向け政策期待が高まりそうです。
●日本では、良好なファンダメンタルズを背景に回復が続くと予想します。日銀の利上げ、長期金利の上昇、公募増資の増加による投資口需給への影響が重石と見られますが、不動産投資はインフレヘッジ手段として再評価が進みそうです。特に、オフィスの賃料の上昇が追い風となりそうです。
8.まとめ
| 債券 |
●米国長期金利は短期的にもみ合い、中期的には上昇すると予想します。財政赤字が高止まるとみられるため、4%をやや上回るレンジを想定します。 ●欧州では、財政赤字が上振れる方向にあり、27年にはECBによる利上げの可能性が出ていることから、長期金利は緩やかな上昇を予想します。 ●日本の長期金利は、財政拡張を受け先高観が続くと予想します。日銀の段階的な利上げを見込んでいますが、物価や為替動向には要注意です。 |
|---|---|
| 株式 |
●米国株式市場では、AI関連事業の収益貢献が遅れている企業の株価調整が起こる可能性はあるものの、利下げ効果や減税策の発現から、ハイテク以外のセクターにも業績や株価の回復が期待できそうです。また、FRBによる流動性供給の再開は金融セクターの株価に引き続きプラスとなりそうです。 ●日本株式市場では、高市政権による、①ガソリン減税、②電気ガス料金補助の増額、など物価上昇を抑制しつつ、消費を活性化する景気刺激策が評価されています。世界景気の回復、原油安などエネルギーコストの低下、円安の進行により輸出採算の改善も見込まれ、26年度の企業業績は改善に向かう見通しです。株主還元強化への期待も株価の上昇要因です。懸念材料としては、決算対策の益出し売りが挙げられます。 |
| 為替 |
●円の対米ドルレートは、日本の解散総選挙などの影響から、短期的には円安が進む可能性が想定されます。中期的には、日銀の段階的な利上げ観測、日本のインフレ率の低下、米国の追加利下げ観測などから、円高方向に修正される見込みです。 ●円の対ユーロレートでは、もみ合いを予想します。FRBの議長交代後の26年後半には利下げ観測が強まる一方で、ECBの27年の利上げが意識され始めると見ており、ユーロは米ドルに対し上昇しやすいと予想します。円も米ドルに対し円高を想定するため、円の対ユーロレートはもみ合いとなる見込みです。 ●円の対豪ドルレートでは、豪ドルには商品市況上昇などの対米ドルでの上昇要因がありますが、日銀の利上げ観測などが円高要因となりそうです。 |
| リート |
●グローバルリート市場は、金融政策や長期金利動向に左右される展開が想定されます。欧州や豪州では不動産価格の再評価が進んでいることが相場を下支えしそうです。米国では国内景気が減速している模様ですが、金利低下期待と出遅れ感が相場を支える見込みです。シンガポール市場では、金利低下と賃料上昇で業績改善が見込まれます。中国や香港では、3月の全人代に向け政策期待が高まりそうです。 ●日本では、良好なファンダメンタルズを背景に回復が続くと予想します。日銀の利上げ、長期金利の上昇、公募増資の増加による投資口需給への影響が重石と見られますが、不動産投資はインフレヘッジ手段として再評価が進みそうです。特に、オフィスの賃料の上昇が追い風となりそうです。 |
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。



