自動車業界の2026年度4-6月期決算
一時的な会計要因を除くと営業利益は回復
2026年8月10日
【ポイント1】販売台数増と円安で、一時的な会計要因を除くと営業利益は回復
■自動車大手の26年度4-6月期決算では、自動車の納入が間に合わず多額の未実現利益が発生したトヨタが減益となりました。トヨタの米国でのディーラー在庫は非常に低い水準が続いています。また、一部のバッテリー式電気自動車(BEV)モデルの開発中止に伴う一過性の費用の計上もあったようです(ホンダは下期計上予定)。これらの影響を除くと、①日本、米国、インドでの販売回復、②円安やトランプ関税に対応した生産地の見直しによる1台当たりの採算の改善、③前年同期に比べ一過性費用が縮小したことなどにより、一時的要因を除いた実質ベースでは全社で営業利益が増益となりました。
■マイナス要因としては、①中国での販売不振、②中東紛争による重要な中東市場での販売台数の減少、③プラスチック、アルミニウム、銅、半導体など部品・資材価格の上昇などがありましたが、ハイブリッド車など好採算の車種の増加、モデルチェンジに伴う値上げなどの対応策が徐々に進んでいます。
■ガソリン高を受け、各社ハイブリッド車の販売が好調です。また、1台当たりの採算も高まっているようです。二輪車事業は、インドや中南米における販売が好調で、大幅な営業増益要因となりました。純利益段階では全社増益を達成しました。
■通期の予想では、①ホルムズ海峡の封鎖が断続的に発生し自動車の輸送が困難になっている、②中国で国産電気自動車比率が急速に上昇している、③熊本の地震の影響で数日間一部工場が停止した、などから販売台数見通しを引き下げる会社が出ています。中国で販売を行っていないスズキを除く大手3社は、中国では他の地域とは異なりハイブリッド車だけでなくBEVも拡充するなど、市場の変化への対応を進めており、販売台数も下げ止まりの気配を見せています。また、米国とイランの交渉が進展し、高級車の比率が高い中東への輸出が回復すれば、業績の上振れ要因となります。
■熊本の地震ではアイシンなど部品会社が被害を受けましたが、他地域の工場で代替の増産が始まるとともに、被災工場の復旧も進んでいます。下半期に挽回生産で増産を行えば、会社の従来の生産計画を達成できる見込みです。ホンダとスズキの二輪車部門の販売台数は、今後も順調に拡大する見通しで、各社の業績計画は保守的に作成されている印象です。
【ポイント2】半導体や資材価格上昇の影響を克服し、多くのグループ各社は増益へ
■トヨタグループ各社の26年度4-6月期決算では、①トヨタ及びトヨタ以外のメーカーの中国における生産台数減少、②中東紛争によるプラスチック、アルミニウム、銅、原料スクラップ、半導体などの資材価格の上昇、などの影響から減益となる会社が目立ちました。アルミニウム精錬では、安い電気料金を背景にアラブ首長国連邦(UAE)など中東諸国が大きなシェアを持っています。ホルムズ海峡の封鎖を受け、各社は代替先の確保を急ぎました。一方、商社機能を担う豊田通商は、アルミニウム、リチウム、半導体メモリーなどの在庫の値上がり益が発生したため、営業利益見通しを引き上げました。
■26年度の各社による営業利益予想は、デンソーを除き増益予想となっています。デンソーは、半導体、電子部品、銅、アルミなどデータセンター向け需要と競合する部品・材料のコスト構成比が大きいことや人件費の増加が減益要因となりそうです。加えて、品質関連の一時的費用が発生したことも、減益予想の一因です。各社は、部品・資材コストや人件費の上昇を製品価格に反映する交渉を行っている模様で、実現すれば業績の上振れ要因です。
■また、グループ各社は、欧米やアジアの自動車会社やトヨタ以外の日系メーカー向けに売上高を伸ばすことのできる製品を多く持っていることも増益要因となりそうです。中でも、オートマチックトランスミッション(AT)、無段変速機(CVT)など駆動力を伝達する装置や構成部品は、多くの自動車会社がBEVへのシフトを見直しているため、トヨタ以外への販売が増えそうです。①ハイブリッド車向けの部品には、トヨタグループ各社が強みを持っている、②エアバッグなど安全装置についてもトヨタ以外のメーカーへの売上高が増えていることも、収益の拡大を後押ししそうです。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
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